資本主義が嫌いな人のための経済学

資本主義が嫌いな人のための経済学資本主義が嫌いな人のための経済学
(2012/02/09)
ジョセフ・ヒース

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タクシー運転手に効率よく稼がせるにはどうすればよいだろうか。
雨の日は利用客が多いのでたくさん稼げるが、晴れの日は客待ち時間が長いので実質的な時給は安い。

ということは、給料を歩合制にして労働時間を自由にすれば、運転手たちは自発的に雨の日に残業するようになり、晴れた日はさっさと切り上げるようになるだろう。それが短い時間で高く稼げる方法なのだから。

ところが、ニューヨークのタクシー運転手を調べたところ、全くの行動をとった。雨の日は早めに切り上げて、晴れの日はダラダラ残業をしていたのだ。

実は、タクシー運転手たちは自分なりに1日の売上目標を決めていて、雨の日はその目標に早く到達するから早上がりしていたのだ。

政治的に右寄りの人は、自由競争や自己責任を重んじるが、【競争】が最適な結果を生むとは限らない。

今はやりのフェアトレードコーヒー。コーヒー豆の価格下落から途上国を救うために、先進国で高く買い上げるというものだ。

コーヒー労働者に適正な賃金を!というお題目は立派だが、フェアトレードの結果どうなったかというと、実際は価格がさらに下落してしまったという。

途上国の農場は、本来なら安くでしか売れないはずのコーヒーを高く買ってもらえるから、もっとたくさんコーヒーを作るインセンティブが働く。その結果、ただでさえダブついていたコーヒーがさらに供給されて価格が下がる。

フェアトレード業者の中には、大量の在庫をかかえてしまってコーヒーを廃棄するところもいたようだ。

もともと価格が下落していたのは供給過剰だったのだから、やるべきなのは価格を上げることではなく、単純に生産を減らすことだったのだ。

政治的に左寄りの人は、自由競争を安易にねじ曲げてでも平等を実現しようとするが、その結果不平等が拡大することがままある。


本書は、私たちが陥りがちな経済学上の誤りを、右寄りの人と左寄りの人に分けて正してくれる。

哲学者である著者は、もともとナイーブな左派だったらしい。経済学を学んで自分の誤りに気づき中道寄りに改めた。だからだろうか、左派に対する批判の方が口調が厳しい。

あとがきの言葉は私たちにシビアな現実を突きつける。

『どんなにばかげた、不公平な状況にも、それが続くには理由がある』

世の中は【複雑】だ。それを変えるにも複雑な頭が要りそうだ。
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