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文学部唯野教授

文学部唯野教授 (岩波現代文庫―文芸)文学部唯野教授 (岩波現代文庫―文芸)
(2000/01/14)
筒井 康隆

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早治大学文学部に勤める唯野(ただの)教授。

学内で唯一?まともな神経を持つ彼は、学生の世話ではなく、幼児がそのまま大人になったような教員たちの世話に手を焼いていた。
そんな彼の密かな楽しみは、野田耽二というペンネームで純文学を書くことと、非常勤の立智大学で大好きな「文芸批評論」の講義ができることだ。

おりしも後輩の人事異動の話が持ち上がり、唯野はその根回しをしなければならなくなる。さらにタイミング悪いことに、彼の純文学作品が芥兀賞(なんて読むんだ?)の候補になってしまった。人事をめぐってうごめく大学の魑魅魍魎どもにハイエナのような新聞記者まで乱入して、事態は予測不能な展開に・・・

これから大学を目指すうら若き人たちには、この話はあくまでフィクションですから…と念を押したほうがよいかもしれない。
本書で描かれる大学は、知識人の集まりどころか、珍獣だらけの動物園となっている。いや動物たちのほうが大学教員よりよっぽど社会性を身につけているかもしれない。

大学の教員というとさも偉そうに聞こえるかもしれないが、小中高の先生と違って国家試験があるわけでもなく、人に教える訓練を一度も受けたことがない人がほとんどだ。いわばお勉強が大好きな人たちが集まって、わいわい言いながら作った組織。それでなんとか回せているのはむしろすごいことで、多少の幼児性は愛嬌といったところ。

無垢な心を持ち続ける大学教員を眺めて【教育】の仕組みを学ぶのも勉強のうちかも。

差別問題にからむ「断筆宣言」で有名な著者の筒井康隆氏。本書もエイズ患者に対する差別表現に満ちていて不快に感じられる人もいるだろう。ただ、当時の社会状況と大学の閉鎖性を考えると、これらのセリフはいかにも言ってそうというものばかりで、それがこの作品のリアリティとなっている。

「文芸批評論」の講義の中で唯野教授は熱く語っている。

『あることばが文学作品の中で出てきたって、その社会的使用法を忘れてもよいってことにはならないの』

本書は断筆騒動が起こる前に書かれたものだ。筒井氏にとっては、言葉の意味が社会の受け止め方によって変わるのは至極当たり前のことで、それを鬼の首をとったかのように言われて嫌気がさしたのかもしれない。
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