変身

変身・断食芸人 (岩波文庫)変身・断食芸人 (岩波文庫)
(2004/09/16)
カフカ

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『ある朝目覚めると、自分が一匹の毒虫に変わっていることに気がついた』

出だしのインパクトは強烈そのものだが、最初に読んだときはそれ以上の印象が残らなかった。

毒虫になってしまったグレゴールの描く世界が狭く歪んでいるように感じられて、どこに感情移入すればよいのかわからなかったのだ。

しかし、ひょんなことから障害者の立場から書かれたレビューを読んで、この作品への見方がガラリと変わってしまった。

毒虫としてのグレゴールの振る舞いが、障害をもっている方が体験されている感覚に近いというのだ。

毒虫としての生活は辛く不便だが、そんな中でも、天井にぴったり張り付いているのが楽だといったように、毒虫なりの小さな幸せを感じたりする。
グレゴールの家族は、毒虫になった彼の面倒を献身的にみているが、どこかで彼をお荷物に感じている。
普段は家族に遠慮して隠れているグレゴールだが、うれしさのあまり自分が毒虫であることを忘れてしまうことがある。
その家族を愛するがゆえの行動が、かえって家族を不幸にしてしまう。

物語は終始グレゴールの視点で書かれ、家族を「父」「母」などと呼んでいるが、ある瞬間から「ザムザ氏」「ザムザ夫人」と呼ぶようになる。そしてそのまま物語は終わる。

障害を持つ子の親の気持ちで読むと、切なすぎる物語だ。

毒虫は変身願望の現われという解釈もされているようだ。
今回読み直してみて、奥行きがあるというか、【芸術】作品として長く愛され続けてきたのがわかる気がした。

この作品は、カフカが生きている間に発表された数少ないものの一つらしい。
「城」「審判」に比べるとすっきりとして格段に読みやすい。書いた本人的にも完成度が高かったのかもしれない。
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Author:shokomotsu
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