森に眠る魚

森に眠る魚 (双葉文庫)森に眠る魚 (双葉文庫)
(2011/11/10)
角田 光代

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娘が産まれてすぐ、妻と交代で子守をすることになった。保育園が見つかるまでの3ヶ月、週2日のデューティだ。

2時間置きにミルクをあげればいいだけだから意外に仕事もできるんじゃないか、という見込みは、ほんの数日で絵空事だとわかった。

産まれたばかりの子どもはミルクを吸う力が弱いので、飲むのに20分くらいかかる。飲んだ後寝かしつけるのにまた20分。やっと落ち着いたと思ったらまた腹が減って泣き出す。これが何度も繰り返される。一日に何度もウンチをするのでその度にオムツ替え、時折ミルクを吐いたら布団や床の掃除。
気分転換にベビーカーを押してぶらついてみても、店員と軽く言葉を交わす程度しか外の世界と関われない。

『親子三人で見ず知らずの異国をさまよっているような感覚に強くとらわれる』

物語に登場する母親のこの言葉は、当時の私が感じた疎外感を見事に表現している。

苦行のようなこの生活になにかしら意味を見出すとすれば、子どもの成長しかない。
この子の命と、将来の人生は、誇張でもなんでもなく、自分一人にかかっているのだ。

小説では、子どもの自主性を大切にして伸び伸び育てたい、と語っていた真面目な母親が、
しだいにお受験にのめりこんでゆく。
【教育】が子どもの将来を変えてくれる、それが自分の人生も解放してくれる
その願いは皮肉にも彼女たちをさらなるの深奥へと追い込んでしまう。

お受験に入れあげて子どもで自己実現をしようとする母親たちを責めるのはたやすいが、
【子育て】という単純作業を、たった一人で目的もなく、毎日何年も続けられるほど強い人間がいるだろうか。

物語に登場する男性はみな影が薄い。でも、この小説はむしろ男性が読むべきだと思う。
【女性】を深い森に閉じ込めてきたのは自分たちかもしれないなのだ。
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