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明暗

明暗 (岩波文庫)明暗 (岩波文庫)
(1990/04/16)
夏目 漱石

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子どもの時分の正月といえば、母方の祖父母の家に集まるのが習わしだった。皆酒好きでなごやかな宴会がだらだらと続くのだが、たまに嫌な雰囲気になることがあった。

それは決まって男の親族がいないときに起こった。祖母が、私の母や叔母を前に、祖父の非道を涙ながらに語るのだ。娘に旦那の悪口を言うのは珍しいことではないだろうが、いつも正座してニコニコしてる置物のようなお婆ちゃんが、突然女の情念のようなものを吐き出す光景に、大人の世界を垣間見た思いだった。

話がだいぶそれてしまった。この小説はもっと若い奥さんの話だ。

お延は、夫の津田とそこそこ幸せな結婚生活を送っている。あまり器量はよい方ではないが、津田を愛しているし、津田にも愛されていると実感している。しかし、そう実感するためにどこか無理をしていた。その無理が、津田の病気をきっかけに、自分にも周りにもわかるようになってくる。そしてある日、津田の悪友小林に、その矛盾を突きつけられる。

明治時代の女性は皆、お延のような葛藤を抱えていたに違いない。経済的に自立できない女性にとって、誰と結婚するか、結婚生活をどう維持するかで、人生のほとんどが決まってしまう。

若さや器量があれば苦労がないかといえば、お延が言い放っている通り、そんなものは
『未来の夫に対してなんの役にも立たない。』

多くの女性は、家計【子育て】に興味の中心を移してゆく。本書では津田の妹お秀がそうだ。しかしお延には子どもがいないし、家計も肝心なところは津田が管理している。津田に愛されているという実感と、それを持続できているという自負だけがよりどころだったが、入院する夫の代わりに周囲と関わる中で、今まで見なくてよかったものが少しずつ見えてきてしまう。

私の祖母は大正生まれだったが、女性の立場は明治と大きく変わらなかっただろう。
昭和初期生まれの母だって、結婚を機に仕事をやめて家庭に入ったので、夫との関係はたいして違わない。
祖母や母が女性としてどんな葛藤を抱えていたのか、母に聞くことはできるが、
男の自分が聞いてはいけないような気がなんとなくする。

この小説は、漱石が亡くなる直前の作品で、未完のままになっている。
彼の小説の中で、【女性】の視点で書かれたものはこれだけらしい。
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