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日本の雇用と労働法

日本の雇用と労働法 (日経文庫)日本の雇用と労働法 (日経文庫)
(2011/09/16)
濱口 桂一郎

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ろくに仕事もできないのに、クビにならないどころか、それなりの役職まで付いている人がいるのはなぜだろうか。
給料が変わらないのに夜中まで残業したがる人がいるのはなぜだろうか。

本書は、お役所や大企業につきもののペケ社員社蓄の謎をすっきり解決してくれた。

就職するときに交わす雇用契約は
「あなたの会社の特定の業務を遂行します、その代わりに給料をもらいます」
という契約。

ところが日本では慣例上、
「あなたの会社のメンバーになります、つきましてはどんな仕事でもさせていただきます(一応給料はもらいます)」
という契約になってしまっているというのだ。

経営者としてはペケ社員を整理したいけど、能力不足を理由にクビや降格にすると裁判で負けてしまう。
就業規則に違反するとか、残業や転勤を拒否するとか、はっきりとした根拠がないとクビにできない・・・。

なんとも理不尽に感じるけれども、このおかげで大多数の社員は【競争】にさらされることなく昇給できたわけだから、一概に文句は言えない。サービス残業や配置転換も、社員全員がメンバーたる身分を維持するための代償だ。

一度入ってしまえばあとは安心。
同じような仕組みをどこかで見た覚えがあるなぁと思ったら、お受験に燃える【教育】の実態がまさにこれ。

正社員の保護の陰で、【女性】やいわゆる非正規雇用がバッファとして機能してきたこと、
成果主義が繰り返し唱えられては、日本型雇用の大きな壁の前で頓挫してきたことも本書で指摘されている。

うーむ、ペケ社員の根は深い。
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文学部唯野教授

文学部唯野教授 (岩波現代文庫―文芸)文学部唯野教授 (岩波現代文庫―文芸)
(2000/01/14)
筒井 康隆

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早治大学文学部に勤める唯野(ただの)教授。

学内で唯一?まともな神経を持つ彼は、学生の世話ではなく、幼児がそのまま大人になったような教員たちの世話に手を焼いていた。
そんな彼の密かな楽しみは、野田耽二というペンネームで純文学を書くことと、非常勤の立智大学で大好きな「文芸批評論」の講義ができることだ。

おりしも後輩の人事異動の話が持ち上がり、唯野はその根回しをしなければならなくなる。さらにタイミング悪いことに、彼の純文学作品が芥兀賞(なんて読むんだ?)の候補になってしまった。人事をめぐってうごめく大学の魑魅魍魎どもにハイエナのような新聞記者まで乱入して、事態は予測不能な展開に・・・

これから大学を目指すうら若き人たちには、この話はあくまでフィクションですから…と念を押したほうがよいかもしれない。
本書で描かれる大学は、知識人の集まりどころか、珍獣だらけの動物園となっている。いや動物たちのほうが大学教員よりよっぽど社会性を身につけているかもしれない。

大学の教員というとさも偉そうに聞こえるかもしれないが、小中高の先生と違って国家試験があるわけでもなく、人に教える訓練を一度も受けたことがない人がほとんどだ。いわばお勉強が大好きな人たちが集まって、わいわい言いながら作った組織。それでなんとか回せているのはむしろすごいことで、多少の幼児性は愛嬌といったところ。

無垢な心を持ち続ける大学教員を眺めて【教育】の仕組みを学ぶのも勉強のうちかも。

差別問題にからむ「断筆宣言」で有名な著者の筒井康隆氏。本書もエイズ患者に対する差別表現に満ちていて不快に感じられる人もいるだろう。ただ、当時の社会状況と大学の閉鎖性を考えると、これらのセリフはいかにも言ってそうというものばかりで、それがこの作品のリアリティとなっている。

「文芸批評論」の講義の中で唯野教授は熱く語っている。

『あることばが文学作品の中で出てきたって、その社会的使用法を忘れてもよいってことにはならないの』

本書は断筆騒動が起こる前に書かれたものだ。筒井氏にとっては、言葉の意味が社会の受け止め方によって変わるのは至極当たり前のことで、それを鬼の首をとったかのように言われて嫌気がさしたのかもしれない。

フェルマーの最終定理

フェルマーの最終定理 (新潮文庫)フェルマーの最終定理 (新潮文庫)
(2006/05)
サイモン シン

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ゼロを発見したのはインド人だと言われる。

本書によると、負の数を発見したのもインド人だというから恐るべしだ。
数学への貢献ではイスラム圏も負けてはいない。インド数字を元に彼らが作り出したアラビア数字は、
今や全世界の共通語になっている。

インドイスラムの国々で数学が華開いていた頃、ヨーロッパの数学は長い暗黒時代の只中にあった。
権力者が数学を異端として迫害した結果、学問の中心たる地位を周辺地域に奪われてしまったのだ。

そんな暗黒時代に突如現れたスーパースター(というよりトリックスター)、それが本書の主人公フェルマーだ。
彼は同時代に出版された古代ギリシャ数学の古典を読みふけり、新たな証明や考察を加えていった。

彼のとったスタイルは、思いついたことを書物の余白にメモしていくことだった。
その余白メモの中にピタゴラスの定理に関するものがあった。

直角三角形の直角を挟む二辺を2乗して合計すると、斜辺の2乗に等しい

この定理はピタゴラスによって二千年近く前に証明されていた。
そこでフェルマーは、この定理を少しだけイジってみた。
その変形版ピタゴラスの定理こそが、三百年以上にわたって人類を悩まし続ける、フェルマーの最終定理である。

謎かけが大好きな彼の余白メモにはこう記されていた。
『私はこの命題の真に驚くべき証明をもっているが、余白が狭すぎるのでここに記すことはできない』

フェルマーの最終定理を証明しようと、数々の数学者が挑み、敗れていった。
その敗北は決して無駄ではなく、後に続く挑戦者に重要な手がかりを与えるものだった。

数学という純粋学問に捧げた【学者】たちの人生は、その対極ともいえる政治や【権力】に少なからず翻弄された。
天才数学者ガロアの生涯は特に悲劇的だ。
彼は、12歳で初めて学校に通い、その6年後には5次方程式の解き方を見出していたという。
しかし天才ゆえの奇行と激しい気性で学術会から見放され、次第に政治活動に傾倒してしまう。
100年先の数学理論を確立したとも言われる少年は、二十歳そこそこで失意の最期を遂げた。
ちなみに彼の生きた時代と場所は、レ・ミゼラブルに描かれた激動のパリである。

数学は、絶対的真実が存在する唯一の学問だ。
誤差や【不確実性】なるものは純粋数学には存在しない。ひとたび証明された定理は、永遠に真である。
数学者は怒るかもしれないが、学問の中では最も【芸術】に近いといえるだろう。

地球外生命体を探索するための電波には、素数が使われているという。
何億年か先、どこかの星でこの電波を受け取るかもしれない知的生命体。
その中に謎かけ好きの数学者がいたとすれば、どんなを返してくれるのだろうか。

円周率を計算した男

円周率を計算した男 (新人物文庫)円周率を計算した男 (新人物文庫)
(2009/05/11)
鳴海 風

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「たがが外れる」という言葉がある。緊張がとれて羽目を外すという意味で使われる。

この「たが」というのは、樽とか桶の周りをぐるっと留めている金属や竹のことだ。
直径10cmの桶の「たが」を外してまっすぐ伸ばすと、その長さは31.4cmになる。
直径20cmの桶だと、「たが」の長さは倍の62.8cmだ。
桶の大きさは変わっても、「たが」の長さは常に直径の3.14倍。これが円周率3.14の意味だ。

円周率=3.14は、江戸時代の初めにはすでに知られていたらしい。樽などの丸い道具を作るのに役立てていたのだろう。

円周率はピッタリ3.14ではなくて、その後に延々と小数点が続く。
江戸時代に和算を考え出した関孝和は、円周率を12桁まで求めた。これによると
円周率=3.14159265359
となる。

ここまで出しても実用にはほぼ役に立たない。
しかし、円周率というは、進めば進むほどその先が気になるようだ。
「もっと先を知りたい・・・」
より正確な円周率を求めるために、多くの算術家たちが人生を捧げた。

本書の主人公、建部賢弘(たけべ かたひろ)もその一人だ。

建部は関孝和の弟子。
血気盛んな建部は、師匠をゆうに超える21桁の円周率を求めて師匠に見せにいく。
ところが、師匠はせせら笑って言うだけだった。
『真の円周率を求めるというのは、ただ腕力にものをいわせて計算することではない』

それでも建部は計算をやめなかった。42桁、80桁、いくら桁数を増やしても師匠のせせら笑う顔が浮かんでくる。
仕事も休み、部屋にこもって死に物狂いで計算を続けた先、ついに建部が見たものは・・・


ノンフィクションかなと思って読み始めたら、史実に基づいた歴史小説
「円周率を計算した男」を含む6つの短編がセットになっている。

6つの物語は時代順に並んでいるので、ある物語で若い算術家だった人が次の物語で立派な師匠になって登場したり、
江戸後期には黒船が登場して数学と思わぬ関わりが出てきたり、歴史をリアル生きている感覚が味わえる。

時は流れて2011年、自作パソコンで円周率10兆桁(!)を計算したサラリーマン男性がニュースになった。
ちなみに、円周率が無限に続くことは18世紀にフランスの数学者が証明済みである。
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shokomotsu

Author:shokomotsu
無意味つづり>書庫モツ連鎖

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