瓜子姫の艶文

瓜子姫の艶文

絶対に読み返してしまう時代小説。

遊女の人情モノの感覚でしんみり読んでいたら
ものの見事に裏切られてしまいました。

近所の図書館ビブリオバトルで紹介されていたのをタイトルだけうっすら覚えていて、
予備知識ゼロで手を出してしまったのが運のツキ。

著者の坂東眞砂子さんは『死国』の著者でもあるんですね。
それすら知らなかった私はラストガクガク震えてしまいました。

ネタバレにならないように書くのは難しいですが、
時代小説をこのようにエンターテインメントにできるのはすごいことです。

それでいて【女性】の情念や切なさも丁寧に描かれています。

ここまで読んでいただいた後では予備知識なしで読めないかもしれませんが、
二度目、三度目もしんみりガクガクさせられること請け合いです。

女性の描く女性の時代小説、やられっぱなしです。
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日蝕・一月物語

日蝕・一月物語 (新潮文庫)日蝕・一月物語 (新潮文庫)
(2010/12/29)
平野 啓一郎

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宗教が堕落したとき、科学が生まれた。

科学世界を記述し終えたとき、世界が一つでないことがわかった。

『日蝕』は、科学の誕生から成熟までをつづった壮大な叙事詩だと言える。

15世紀末、教会の腐敗に嫌気がさしていた主人公は、ある錬金術師と出会った。

錬金術師は、当時の教会や聖職者が失ったストイックさを持っていた。
毎日決まった時間に起きて、練金炉(アタノオル)に向かう。

金属を溶かし、変性させてゆくプロセスは、
ミサの儀式のように順序立てて、おごそかに行われる。

そう、原初の科学【宗教】のような顔をしていたのだ。


同じ村で、主人公は日がな一日ブランコに揺られる少年を見た。

少年はを開けているが、笑っているわけではない。
父親によると彼は唖(おし)だという。

声を発することなくポッカリと開いたその口は、
深淵への入口のように感じられた。

彼の心の内は誰にもわからない。

そう、科学はまだこちら側の世界しか俯瞰していないのだ。


ついでに言えば、『一月物語』の主人公は、
重力の地平線を超えてブラックホールに落ちていくかのように、
幻のに吸い寄せられついには融合する。

間違いない。著者の平野啓一郎は小説家の顔をして、その実科学者なのだ。
彼が表現する世界は、やがてあちら側へとその領分を広げてゆくのだろう。

凍 (新潮文庫)凍 (新潮文庫)
(2008/10/28)
沢木 耕太郎

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ミスター&ミシズ・ストイック

シェルパなし、酸素ボンベなし、ベースキャンプを出たら誰の助けも借りない。
ただ登って、降りてくる。

このアルパイン・スタイルで世界を席巻する山野井泰史・妙子夫妻。

エベレストには興味がない。あそこは「登らせ屋」に登らせてもらうとこらしい。
七大陸最高峰も眼中にない。制覇できることは誰かが証明済みだから。

彼らが目指すのは、美しく、誰も寄せつけない山(というより)。

垂直に近い氷の壁に10センチの棚を作ってビバーク。
丸2日眠らずに登り続けることもざら。

妙子は手足の指の18本を凍傷で失った。
それでも全く動じないものだから、同じ病院にいたヤクザがリスペクトに来た。
小指一本で大騒ぎしてるのが恥ずかしいと。

そんな体で妙子はまだ登り続けている。

普段は奥多摩の古民家でつつましく暮らす。
ヒマラヤ登山の予算は二人で150万円
某老人をエベレストに登頂させるのに1億以上かかったという話と比べると破格。
スポンサーもいらない。登山用具メーカーのアドバイザー契約だけ。

『やっぱり山が好き』

それだけの理由でを追い続ける二人。
大変失礼ながら、どうかしてるとしか言いようがないのだが、
ノンフィクション作家の手にかかるとやはりかっこいい

停電の夜に

停電の夜に (新潮文庫)停電の夜に (新潮文庫)
(2003/02/28)
ジュンパ ラヒリ

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東京に出てきて20年以上になるが、いまだに納豆だけは食べられない。
慣れ親しんだ土地でもこれだけはなじめないという習慣が1つくらいはあるものだ。

インド系アメリカ人の場合、をはいたまま部屋にあがるのがそれにあたるらしい。

本書の登場人物はみな【アメリカ】に住むインド系移民。
女性でもを運転できないと生活できないとか、鮮魚が手に入りにくいとか、
【ヒンドゥー】文化と勝手が違うことに当惑しながらたくましく生きる姿が描かれるのだが、
こだわりポイントが妙に日本人っぽくておもしろい。

本書のもう一つのテーマは倦怠期の男女関係。
主人公たちは共通して、出会った頃の輝きを失い、
ダラダラと付き合い続けている。

盛り上がってた頃は気にならなかったちょっとした仕草に
イラっとしたりするところも民族共通のようだ。

意地を張らずに流してしまえば長く付き合えるのかもしれないが、
本書に登場する男女の場合、なぜか歩み寄らずに別れてしまうパターンが多い。

インド系女流作家ということでちょっと気張って読み始めたが、
主人公たちの気持ちにすんなり共感。しかも短編集にしては
結構ずっしりとした読後感。

自分もあのときああしてたらどうなってたかなぁなどと、
人生を振り返りながら読んでしまった。

闇の奥

闇の奥 (文春文庫)闇の奥 (文春文庫)
(2013/02/08)
辻原 登

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本書を読み始めて、私はな感覚にとらわれた。

ところどころに、どこかで読んだ記憶があるのだ。

例えばインドネシア東部で発掘された原人の話。
骨から推察される身長は大人でも1メートル、
脳容量はチンパンジー程度だった、という新聞記事だ。

昔読んだ本をパラパラと開いてみると、
ある書物の冒頭に全く同じ記事が出てきてゾワッとした。

次に中世ヨーロッパに伝わっていた小人伝説
聖書をテーマにした書物でそっくり同じ話を読んだ。

ほかにも、数学者の話死刑囚の話中国の暴動、そしてチベット奥地の谷

最後のチベットはAmazonのおすすめでつながってるから当たり前だとしても、
ほかのバラバラな読書歴が物語の重要なモチーフとして次々現れるのは
どういうわけなのだろうか。

『何かに集中すると、それに関するものが向こうからやってくる』

そう、この本は向こうからやってきた。

『みなさんは空想と現実は別のものと考えておるでしょう。
果物の例でいいますと、果物の芯は空想で、果肉が現実なのです。
空想がふくらんで現実をつくるのです。決してその逆ではありません。』

やばい、なにが現実かわからなくなってきた。
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Author:shokomotsu
無意味つづり>書庫モツ連鎖

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