法医学のミステリー

法医学のミステリー

飛行機の中で医者が金持ちそうな乗客を物色している。

「あなた、顔色がすぐれませんね。こういう症状はないですか?」

「それはがんの疑いがありますね。なあに心配はいらない。
今はがんでも早く見つかれば注射で治る時代ですよ。
私の病院にいらっしゃい。」

後日、型どおりの検査を受けた金持ちは言われた。

「やはりがんでした。でも幸い早期だったので2週間も入院すれば治りますよ。」

金持ちは医者にいたく感謝したという・・・

『がん放置療法のすすめ』というのが流行っているらしいが、
30年近く前からこういう小噺があったということは、昔から
医者はよけいなことしかしないと思われていたのだろう。

この本は法医学者が書いたエッセイ集で、
変死体やら親子鑑定やら処女鑑定やら、法医学にまつわるゴシップが続くのだが、
後半は冤罪事件が生まれる構図をシリアスに分析している。

下山事件、八海事件、加藤老事件…

歴史に残る未解決事件、冤罪事件は、法医学者が警察のいいなりの証言を
してしまったことが少なからず影響しているという。

自らも法医学者である著者は、再発防止のための提言までしている。

それは、刑事事件専門の監察組織を作り、捜査権限を持たせること。
被告の人生を左右するような決定を、個人でしてはいけない、ということだ。

大きな組織よりもたった一人の神の手を信じたいのも心情ではあるが、
三人寄ればなんとか、大事なことは一人で決めちゃいけないってことかな。
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種の起源

種の起源 (光文社古典新訳文庫)種の起源 (光文社古典新訳文庫)
(2009/09/08)
チャールズ ダーウィン

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別の記事でダーウィンをただのボンボンと評してしまったが、
「種の起源」を読んで深く反省

いやー、【進化】論スゴすぎ。

エビとカニが似てるわけ

クジャクの羽根のデザインが派手なだけで何の機能もないわけ

人類がホモ・サピエンスしか生き残らなかったわけ

ユーラシア大陸で生まれた人種が世界を支配しているわけ

素朴な疑問はすべてダーウィン様が解決済みですわ。

締めくくりの言葉がまたシブい。

『自然の闘争から、飢餓と死から、われわれにとってはもっとも
高貴な目的と思える高等動物の誕生が、直接の結果としてもたらされるのだ。
この生命観には荘厳さがある。』

こらあかん、「ダーウィンが来た!」観て泣いてまうわ。

ダーウィンと進化論 -その生涯と思想をたどる-

ジュニアサイエンス ダーウィンと進化論 -その生涯と思想をたどる-ジュニアサイエンス ダーウィンと進化論 -その生涯と思想をたどる-
(2009/01/31)
Kristan Lawson

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娘が「ダーウィンが来た!」にハマったせいで我が家のハードディスクは
ダーウィンライブラリと化しているわけで…

ムツゴロウさん千石さんも使わず視聴率がとれる動物番組はテレビ史上初(たぶん)。
ともかく我が家ではダーウィンといえばテレビ番組になってしまったわけだが、
ダーウィンといえばやはり「進化論」である。

ダーウィンの本来の姿に戻ろう、と本書を開いてみたのだが、
また新しいダーウィン像ができてしまった。

そのダーウィン像とは、おたくのボンボンである。

まず、ダーウィンは進化論を思いついた人ではない。
生き物が【進化】してきたという説は古代ギリシャ時代からあって、
ダーウィンの時代には隠れ支持者も多かった(ダーウィンのおじいちゃんもその一人)。

さらに、ダーウィンはガラパゴス諸島にはあんまり関心がなかった。
イグアナフィンチを観察して「進化論」をひらめいたと思いきや、
ダーウィンはガラパゴスにチョロっとしか寄ってないし、
「種の起源」でも軽く触れてる程度なのだ。

そしてダーウィンは生涯ほぼ無職だった。

医者の御曹司で食いぶちの心配がなく、好きなだけ生き物採集ができた。
ガラパゴスへの探検費用もすべてパパ持ちである。
(イギリス海軍の測量船にお金を出して便乗させてもらった)

立派なヒゲをたくわえて学者然としているが、
趣味の延長で生き物を集めてただけなのだ。

あれれ?聖書を否定する大発見をしたんじゃなかったっけ?

実は彼のすごいところは、進化論を発見したことではなくて、
オタク作業で集めた膨大な生き物ネタを、きちんと体系立てて
一冊の書物にまとめたことなのだ。
(そういう意味で本職はサイエンスライター

その書物、「種の起源」のメッセージはとてもシンプル。
ヒトは飼い犬や農作物の品種改良ができるのだから、
自然界でも同じことが起こっているはずだというもの。

天地創造と矛盾するということで反論されるのが恐くて、
ネチネチ証拠固めをしていたら思いのかほか大作になってしまった。

1800年代ともなれば聖書に書いてあることが事実じゃないことは
みんな薄々感づいてたわけで、それをハッキリと、しかも完膚ない形で言っちゃった。

プロレス的なお約束で「種の起源」は大騒ぎを巻き起こしたわけだが、
永遠のおたく少年ダーウィンは、人前には出ず引き込もり生活を続けた。

亡くなった後も郊外にひっそり埋葬してもらいたがったが、
名前が売れすぎてたので国葬にされてしまった。

埋葬場所はウェスト・ミンスター寺院
我らがスーパースター、【ニュートン】と同じ場所である。

さすが大英帝国、懐が深いというか、おたくに優しいというか。

医学探偵ジョン・スノウ―コレラとブロード・ストリートの井戸の謎

医学探偵ジョン・スノウ―コレラとブロード・ストリートの井戸の謎医学探偵ジョン・スノウ―コレラとブロード・ストリートの井戸の謎
(2009/07)
サンドラ ヘンペル

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コレラの原因菌を発見したコッホの名前は有名だが、
その30年前にコレラを予防する方法を見つけた人物がいたことをご存知だろうか。

彼の名はジョン・スノウ。医学探偵と名付けられた本書の主人公である。

コレラは、激しい下痢で健康な人間を1日でミイラに変えてしまう。
19世紀のロンドンでは、コレラが何度も大流行して人々を恐怖におとしいれた。

当時コレラは、汚れた環境から出る「瘴気」(悪臭のようなもの)が原因だと考えられていた。
実際、コレラは衛生状態が悪い貧民街で多く発生していた。

一方、スノウは、飲み水が怪しいと考えた。
スノウのすごいところは、自説を証明するために科学的な手法をとったことだ。

当時ロンドンには2つの水道会社があった。
それぞれの水道会社がカバーする範囲は複雑に入り組んでいて、
隣り合う家が違う水道会社の水を飲んでいるケースも珍しくなかった。

スノウはここに目をつけた。
コレラ患者の記録から住所をたどり、その患者がどちらの水道会社の水を飲んでいたかを
一件一件調べて回ったのだ。

結果は実に美しいものだった。

一方の水道会社のコレラ発生率は、もう一方の水道会社の9倍にもなっていた。
発生率が低い方の水道会社は、排泄物で汚染されていないテムズ川の上流から水を取っていた。

スノウはこの結果だけで満足しなかった。
彼が住んでいた地区にコレラが発生したとき、
患者の発生箇所の中心にあった井戸水のポンプを止めるよう進言したのだ。

ロンドンのSOHO地区には、そのポンプのレプリカが残されている。
スノウの進言通り、ポンプは取っ手が外された状態になっている。

実際は、ポンプを止めるタイミングは少し遅すぎたらしい。
しかし、彼のとった行動をお手本として、
コレラの流行は飲み水の衛生管理で防ぐことが可能になった。

コレラの原因となる菌が発見されたのはその30年後である。
感染経路の目星はとうについていたので、この発見は予期されたものだった。

物事の原因が見えなくても、目の前にある問題に対処することはできる。
知恵というのはこういう風に使うものなんだなぁと痛感させられる一冊。

牛はどうやって草からミルクをつくるのか―ルーメンの秘密

牛はどうやって草からミルクをつくるのか―ルーメンの秘密 (新日本新書)

牛はしか食べないのになぜミルクを出せるのか?

ミルクはタンパク質、草は繊維質というイメージだが、
実は草にも同じくらいの割合でタンパク質が含まれている。

だけど、草のタンパク質ではミルクは作れない。
中身のアミノ酸に足りないものがあるからだ。

そのアミノ酸は、牛が自ら作り出すこともできない。

では誰がどこで作っているのか?

その答えは、4つの胃にあった。
人間の家畜である牛は、実は自分でも家畜を飼っていた、というのが答え。
人間も似たような家畜を飼っているが、飼ってる場所と目的が違うらしい。

詳しい謎解きは本書にお任せしよう。
それにしても、身近なところでいろんな生き物にお世話になっているものだ。
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shokomotsu

Author:shokomotsu
無意味つづり>書庫モツ連鎖

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